「みかんの国で駆け抜ける青春」

 大学時代、京都で合唱音楽と出逢った私は、これまで体験したことのない「声を合わせる芸術」に魅了され、没頭しました。地元和歌山に帰り、しばらく音楽からは縁遠くなっていたのですが、恩師須賀敬一先生の呼びかけにより大学合唱団40周年記念演奏会に出演したことをきっかけに、ここ和歌山で思い切ってゼロから合唱団を立ち上げることにしました。「地元和歌山での合唱文化の発展」などと高い志を示しながら、果たして何ができるだろうか…と思案していたときに「何が何でも10年は続けるように。」と音楽監督を引き受けてくださった、こちらも恩師である伊東恵司先生の言葉はこの10年の私の支えとなっています。かつて所属していた合唱団「葡萄の樹」にあやかり、「蜜柑の樹」という意味の名を付けEnsemble Mikanierは誕生しました。

 結成当初は人数も少なく、また当時は小アンサンブルより大合唱団全盛期でもありましたので、選曲には苦労しました。メンバーもほとんどが豊かな合唱経験がなく(それは今も地方ならではの悩みかもしれません)、運営面においてもそのほとんどが制度を含め熟慮に熟慮を重ねる日々でもありました。合唱祭などでは私たちの演奏が始まる頃にはお客様が少なくなる、団員募集のチラシは演奏会会場に捨てられる…など、悔しい経験もたくさんしました。おかげさまで、このところ「ミカニエさんの出番は何時ですか?」「演奏会はどこで開催されても見に行きます。」「いつかミカニエで歌ってみたい!」などといった、本当にありがたいお言葉を耳にする機会も増え、演奏会にも全国各地から多くのお客様に来ていただける合唱団に成長できたことは、メンバーの努力、そして支えてくださる皆様あってこそのことであり、指揮者である私自身もまたミカニエとともに育てていただいている、そのことに感謝の気持ちでいっぱいです。

 さて、ここから次の10年、どのような「みかんの実」を実らせることができるか、仲間を増やしながらどんどん猪突猛進(私の見た目の意味ではなく)、頑張っていきたいと思っています。10周年記念となる今年は、念願だった4月のコーラスめっせ2017においていずみホールデビュー、7月には久しぶりのアルティ声楽アンサンブルフェスティバル出演、そして12月10日には思い出の地京都にて第10回定期演奏会~シューベルティアーデin京都~を開催します。千原英喜先生の超編曲、みなづきみのり先生の超訳、そして松本望先生のピアノ…と、書いているだけでもワクワクする内容で盛大に記念の年を飾りたいと思います。

 最後に、この10年無茶ばかり言う私に懲りずにともに歩んできてくれた、結成日からのメンバー藤田哲史氏に感謝を込めて…。そして、かけがえのないミカニエメンバーに心から祝福を…。

 

Ensemble Mikanier

主宰/常任指揮者 阪本 健悟